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一見、何の不自由もなく見えるこの現代。でも、実は誰もが、どこかで見えない不安を感じています。
「自分ていうのは、一体なんだろう?」「このままこうして生きていっていいの?」
胸に手を当てて考えると、思いは自然と、自分が育ってきた過去へ。中でも親との関係を振り返ると、誰の心にも、開きたくない1ページ、「言いたいけれど言えなかった思い」があるはず。親はたしかに一生懸命自分を育ててくれたのかも知れない。でも、あの時の自分の気持ちは、本当に親に届いていたのだろうか? 記憶をたどるうち、ふとそんな「パンドラの箱」を開けたくなってしまったことはありませんか?
この物語の主人公・瞬は、子どものような純粋さと絵の才能を持ち合わせながら、幼児期に母親から受けた虐待によって、その精神はひどく傷ついています。彼は、偶然知り合った童話作家・香澄と心を通わせ、その娘・由里子のカウンセリングを受けることになりますが、治療者のはずの由里子もまた、母親である香澄に対し、根深いこだわりを持ち続けているのでした……。
万能なる母、大地の母。心理学では、母親は子どもが成長していくための「鏡」にたとえられます。しかし、その母が、まるで氷のように冷たく、すべてを凍えさせてしまう存在だとしたら?
「凍える鏡」は、もはや親から「無条件の愛」を与えられることのなくなった現代人の孤独とそこからの回復を、ひと組の母子と青年との関わりを通して描き出した21世紀の寓話なのです。
主演は、映画「包帯クラブ」やテレビドラマ「僕の歩く道」「牛に願いを」などで成長著しい若手俳優・田中圭。これまでの等身大の好青年役とは一線を画した、心に闇を抱える青年・瞬を繊細かつ大胆に演じ、新たな魅力を見せてくれます。瞬をグレートマザーのように包み込みながら、実の娘には別な顔ものぞかせる童話作家・香澄を好演するのはベテランの渡辺美佐子。「いつか読書する日」「東京タワー」など近年も多くの映画に出演し、この作品が記念すべき百本目の出演作となります。また、娘の由里子には「犬、走る」「閉じる日」などの映画をはじめ、舞台でも活躍がめざましい冨樫真が扮し、現代の悩める三十代女性をリアリティ豊かに演じています。そして監督・脚本は、家族の崩壊と再生を描いた「カナカナ」「火星のわが家」が内外の映画祭で高い評価を受けてきた大嶋拓。まさにこれまでの集大成とも言うべき秀作の誕生です。
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